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Art and design of Rut Bryk
ルート・ブリュークを巡って【中編】

A Scenery of Modern Deign

ルート・ブリュークを巡って中編

マーリア・ウィルッカラの自宅キッチンにはルート・ブリュークの絵皿(1958−60)が美しくディスプレイされていた。

ミッドセンチュリーを経て

第二次世界大戦の敗戦後、奇跡とも言われる戦後復興を経て1952年にはヘルシンキオリンピック開催……と、フィンランドのミッドセンチュリーは輝いていた。それはデザインやアートにおいても同様で、ヨーロッパを代表するアートとデザインの祭典、ミラノ・トリエンナーレではフィンランドのデザイナーやアーティストが多くの部門で次々に入賞し、存在感を高めた時期でもあった。 ルート・ブリュークは、同展で1951年にグランプリ、54年には特別賞と連続受賞を果たしている。

ルート・ブリュークを巡って中編

ルート・ブリュークの絵皿「Easter Plate」(1958)(中央)、「Lemmon and Two Plums」(1959−60)(右)。

すでにタピオ・ウィルッカラと結婚していたルート・ブリュークは、48年に長男サミ、54年には長女マーリアを生んでおり、まさに家庭生活と創作活動の両面において最も充実した──大忙しの時期だったことが想像される。夫のタピオ・ウィルッカラも51年の同展では3部門でグランプリを受賞し、デザイナーとしての地位を不動のものにしている。 そんな中、ルート・ブリュークの信仰や自然をテーマにした人生や生活への愛着が感じられる作風が徐々に抽象的で硬質なもの変わっていったことは興味深い。60年代に入ってからは、多様なモチーフの連続によって構成する作品を発表し、モチーフ単体の意味を超えたイマジネーションの世界を作り上げることで本領を発揮し始める。

ルート・ブリュークを巡って中編

リビングに飾られた聖母子像「Maaemo」(1953)。窓の左側壁にはタピオ・ウィルッカラの写真、右側には陶板作品「Kallat」(1950)が。「家にある母の作品の多くは、父が買い取ったものです」(マーリア)。タピオ・ウィルッカラは妻の作品の中でも小品が散逸をしないように心を砕いていた。

家庭生活

「母は普通の家庭の主婦とは大分違って、いつも自分の夢の世界、創作の世界、詩の世界に生きているようなところがありました。家事や料理はやれば上手でしたが──これは本当ですよ、母の料理はとても美味しかったのですから──日常的に家事にいそしむタイプではなく、むしろ父の方が家庭的だったと思います。 父は毎朝、母のためにコーヒーを入れ、アラビアのスタジオにも送り迎えしていました。彼は堅実で現実的な父親であり、旅行に出掛けるにしても何をするにしても時間にも正確でしっかりしていたのですが、母はそうではないと言うか……言ってみれば、真反対でした」(マーリア)。 「私たちの両親は子供のための遊び──おもちゃを与えたり、遊園地に連れて行ったりなどはほとんどしない親だったのですが、家族で過ごす湖畔の家での長い夏の休暇、冬のロヴァニエミの別荘で暮らしそのものが遊びでした。 釣りをしたり、薪を作ったり、料理をしたり、湖で泳いだり、森を探索したり……そういったことすべてが家族の思い出になりました」(マーリア)。 ルート・ブリュークを巡って中編

ルート・ブリュークを巡って中編

ヘルシンキ市庁舎ホールの壁面作品「City in the Sun」(1975)は、多くの市民に愛されるの大作のひとつ。幅4790㎜×高さ2960㎜。

ルート・ブリュークを巡って中編

多彩なイマジネーションの世界へ

1960年代から70年代、ルート・ブリュークはそれまでの動植物や信仰をモチーフにした具象表現から多彩なイマジネーション、抽象の世界へと表現の翼を広げていった。 公的機関や企業、病院などの公共スペースのための型のモザイク作品を数多く手掛けるようになり、中でも75年のヘルシンキ市庁舎ホールの壁面作品「City in the Sun」は、多くの市民に愛される傑作である。 また、73年から79年にかけて夫タピオ・ウィルッカラとのコラボレーションでデザインしたローゼンタール社(独)のテーブルウェアのシリーズには、実用品でありながらその域を超えた静謐さが湛えられている。(H.W.)

〈続く〉

ルート・ブリュークを巡って中編

ローゼンタール社(独)のテーブルウェアシリーズ「Century」のソルト&ペッパー(1979)。デザインを夫妻で手がけた。

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