【トーク&スライドショー】
「マグナム70余年の物語、パリに寄せて」 by 小川潤子(マグナム・フォト東京 代表）
■11月22日（金）19:00-20:30
※準備のため17:45-18:30は一旦閉廊致します。

■イベント詳細と、参加ご予約はShop Page にて。
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W.W.II. Paris, Including LeClerc, De Gaulle FFI Snipers, パリ解放 1944/ Robert Capa © International Center of Photography/Magnum Photos

ヨーロッパは、社会構造が大きく変化した19世紀以降、とりわけ第一次世界大戦後、大陸の平和（＝ひとつのヨーロッパ）を希求し、その礎となる「民主主義」、「法の下の平等」獲得のために壮絶とも言える産みの苦しみを経験している。
その一プロセスである1930年代後半から60年代、パリを主人公とした物語の背景には、隣国でのファシズムやナチズム政権の成立、内戦、侵略、第二次世界大戦があり、終戦後のアフリカ・アジアの植民地の独立運動があり、フェミニズム運動があった。

芸術と読書の秋──本特集では、さまざまな思想家、アーティストの才能と活力が集まり影響し合いながら現代社会の礎を作った、1930年代後半から60年代のパリ、奇跡のような時代と街に注目し、写真家集団マグナムの写真とともに、今一度、名著をひもといていきます。

Paris. Jean-Paul SARTRE and Simone de BEAUVOIR, サルトルとボーヴォワール 1969/ ©Bruno Barbey/Magnum Photos

【背景となる物語】

1933年、ドイツではナチス政権が成立し、35年以降はドイツを逃れたユダヤ系移民が、パリを始め各地へ移民した。一方、スペインでは36年から39年まで独裁政権下での内戦があり、39年のドイツのポーランド侵攻、そして第二次世界大戦の勃発……、パリは1940年から44年まで続いたドイツの支配（ヴィシー政権）の下、忍従と抵抗の年月を強いられた。
45年の終戦後は、フランスはじめヨーロッパ諸国の植民支配を受けていたアフリカ、アジア各国が相次いで独立。フランスはアルジェリア戦争（1954−62年）を始めとする植民地との戦いの中で自己矛盾とも戦わざるを得なかった。

この30年代から60年代のさまざまな戦いの中で、文学者、アーティストたちが果たした役割は計り知れない。
ハンガリー移民のロバート･キャパは、エリオット・アーウィット、アンリ・カルティエ・ブレッソンとともに写真家集団「マグナム」を組織し、ピカソ、コクトー、ジャコメッティ、フェルナン・レジェが新たな芸術の地平を模索し、アルベール・カミュが、思想誌「コンバ（闘争）」を、ジャン・ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワールが「ル・タン・モデルヌ（モダンタイムズ）」を率いた。
また、『第二の性』（1949年、ボーヴォワール著）の刊行は、その後のフェミニズム運動をさらに加速させた。

当時のパリでは、ヨーロッパが傾倒していた「家族、国家、労働」という単純な価値観に対して、文学者、思想家、アーティストを中心に、「自由、平等、博愛」という複雑かつ立場によって解釈も多様な価値観を、異質さ、多様さを強みに変えて実現させていこうという活動が続けられていた。
そして、その活動は現在もなお続けられている。

すでに出来上がった概念としてのそれではなく、2世紀に渡る歴史の中で十分な根拠を持ち、より良く生きる術として錬磨されてきたヨーロッパの「民主主義」と「法の下の平等」。
パリで熟成された思想と文学をひもとくと、その重厚さからはあらゆる意味で遠い日本と、また、遠さゆえの可能性と自由も見えてくる。
この秋、ぜひ、読書の時間を。(W.H.)

Golfe-Juan. Augst 1948. Pablo Picasso with Francoise Gilot and his nephew Javier vILATO, on the beach, ピカソとフランソワーズ・ジロー 1948/ Robert Capa © International Center of Photography/Magnum Photos

【展示・販売】
■マグナム　オリジナルプリント作品：8点
（閲覧用カタログより、受注プリント制作販売予定）