Books and Modern

Gallery

Gallery > art > October,2020

Jonas Mekas Special 2/ Hello again “Glimpses of Beauty”
ジョナス・メカス特集2/フィルムで再会する、美しい時の数々

2020年11月12日(木)−12月13日(日)12:00−20:00
■最終日13日(日)は18:00まで
【休廊】毎週(火)(水)および
    12月4日(金)、5日(土)、6日(日)

【会場】
SUNDAY(世田谷・三宿)内スペース「露路 Roji」
住所:東京都世田谷区池尻2−7−12 B1F 地下鉄田園都市線 池尻大橋駅、または三軒茶屋駅より徒歩12分。東急バス「三宿」停留所より徒歩1分。

photo1

Images from “As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty” ⓒ Jonas Mekas

中国のどこかで、小さな花にとまった蝶がひとたびはばたけば、
そのために地上の文化と歴史は根底から変化することをわたしは知っている。
ニューヨークのロワー・イーストサイドのどこかで、
スーパー8のカメラがほんの一瞬ジーッと回れば、
世界はそれだけで間違いなく変わる。
──ジョナス・メカス

□□□

photo1

All images from “As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty” ⓒ Jonas Mekas

ブックスアンドモダン企画、ジョナス・メカス特集第2弾では、ジョナス・メカス(リトアニア生まれ・米国。詩人、映画作家 1922−2019)が、半世紀を超えるニューヨーク生活を撮影、編集した “映画日記” の集大成、「歩みつつ垣間見た美しい時の数々 As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty」
(16㎜フィルム 2000年 288分)を上映します。

会場ではメカスの16㎜フィルムのプリント作品「フローズン・フィルム・フレームズ」のシリーズから上映映画を物語るニューヨークを背景とした作品約10点を展示販売。また、写真家、津田直氏が今年初めリトアニア、生地のセメニシュケイ各地を訪れ撮影したインスタントフィルム作品(ライカ ゾフォート)を展示します。
メカスが暮らしたニューヨーク、故郷のセメニシュケイ、ヴィリニュス、ビルジャイ……詩人が生涯、心のよりどころとした場所と「美しい時の数々」にフィルムで再会する1カ月です。

会期始めの2日間は津田直氏(11月13日(金))、メカスと日本の架け橋となった翻訳家、木下哲夫氏を招いてのトークイベント(14日(土))も開催します。

photo1

■参加ご予約はShop Page (チケット販売)、
または info@booksandmodern.comにてお申し込みください。

■【紫】【16㎜フィルム映画上映】14:00−19:30(途中休憩3回あり)
各回、定員20名 要予約/税込2,750円
「歩みつつ垣間見た美しい時の数々 As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty」
(2000年 288分)

■【赤】11月13日(金) 19:00−20:30 定員20名 要予約/1ドリンク付き 税込2,500円
津田直氏(写真家)トーク&スライド上映「ジョナス・メカス 追憶の旅路」

■【赤】11月14日(土) 18:00−20:30
定員20名 要予約/1ドリンク+食事付き 税込5,000円
木下哲夫氏(翻訳家)トーク「メカスさんの思い出」&DVD上映「メカス1991年夏 ニューヨーク・帯広・山形・新宿・リトアニア」(小口詩子作品 1994年 92分)

木下哲夫(KINOSHITA Tetsuo)
1950年東京生まれ。京都大学経済学部卒業。パリ第三大学にて英文学を学ぶ。1982年にジョナス・メカスと出会う。メカス日本日記の会(1991−)の設立メンバー。文芸、評論、美術書の訳書多数。メカス関連の訳書に『メカスの友人日記 レノン・ヨーコ・マチューナス』『ジョナス・メカス ノート、対話、映画』など。

津田直(TSUDA Nao)
1976年神戸生まれ。写真家。世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている。写真集に『SMOKE LINE』、『Storm Last Night』(共に赤々舎)など。2018年にリトアニアで撮影した『Elnias Forest』(handpicked)を刊行。雑誌『TRANSIT』(No.47 Spring 2020)バルト三国特集にメカスについて等寄稿。

【展示作品】
■ジョナス・メカス 16㎜フィルムのプリント作品「フローズン・フィルム・フレームズ」約10点(展示・販売)

2000年以降、メカスは1960年代から撮影した映画の16㎜フィルムのプリント作品の制作に取りかかった。映画フィルム原稿ならではの動的な魅力がある。

photo1

左/ケネディ家の子どもの映画教師をしていた1972年の夏に撮った「殴り合い」のシーン。殴られ役はジョンJr.で、殴り役はピーター・ビアード(写真家)。
中/1972年の映画「リトアニアへの旅の追憶」より、母、エルズビエータ。
右/1966年アンソロジー・フィルム・アーカイブスの支援者、ジェローム・ヒルとともに訪れたカシスの浜辺。 ⓒ Jonas Mekas/ときの忘れもの

■津田直 インスタントフィルム連作プリント(ライカ ゾフォート)
約5点(展示のみ)

2020年1月、メカスの没後一年に合わせリトアニアを再訪した津田直。首都ヴィリニュスではメカスを偲び、若者達が集うバーで映画が上映され、音楽が鳴り響いた。またメカスが青年期を過ごしたビルジャイの街や故郷セメニシュケイを歩いた。1月23日にはビルジャイにて小さな追悼式が開かれ、詩が朗読された。この旅で撮られた多くの写真は、インスタントフィルムカメラによって写された。
会場では4枚1組の額装作品を展示。

photo1

左/青年期を過ごしたビルジャイにて。 右/ヴィリニュスにあるバー「Vejai」にて。© Nao Tsuda 2020, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

【解説】
ジョナス・メカス(1922−2019)は、リトアニア生まれの詩人、映画作家です。独立系、前衛、実験映画の保存、上映を目的とするアンソロジー・フィルム・アーカイブズ(Anthology Film Archive, New York, 1970−)の設立メンバーであり、米国の現代アートを牽引したメカスですが、二十歳代の大半は、ヨーロッパの小国の歴史を映す、戦争と政治の暴虐によって行き場を失った多くの人々の人生そのものでした。

メカスは、祖国リトアニアがナチスドイツの占領下にあった第二次大戦末期、ナチス政権の迫害から逃れるためにウィーンを目指しますが叶わず、ドイツ国内の強制収容所に収監されました。そして1945年5月の第二次大戦の終結、ドイツの敗北後、ソ連邦に組み込まれたリトアニアへの帰国を断念し、難民収容所を転々とした後、1949年10月29日、ニューヨークにたどり着きます。

強制労働、難民収容所、渡米、27歳になってからの英語、ニューヨークで仕事を転々とする生活、1950年にボレックス16㎜のカメラを入手してからの日々……。それまでリトアニア語で詩作してきたメカスは、英語で表現しきれない詩心を16㎜フィルムに刻むと同時に、詩人の矜持をもって毎日の出来事を克明にノートに書き記しています。
『メカスの難民日記』(みすず書房)や『メカスの映画日記』(フィルムアート社)からは、そうした日々と、お金もコネもない中、撮影、執筆、雑誌の編集に取り組み、映画作家、評論家として少しずつ土台を築いていく姿が読み取れます。

メカスの活動は、ヴェニス国際映画祭のドキュメンタリー部門で大賞を受賞した「営倉(The Brig)」(1963年)を始め、その後の“日記映画”の原型とも言える「ウォールデン」(1969年)、「リトアニアへの旅の追憶」(1972年)、「ロストロストロスト」(1976年)などの映画制作のみならず、前衛芸術運動フルクサス(※)を率いたジョージ・マチューナスやオノ・ヨーコとの活動、さらには前記の「アンソロジー・フィルム・アーカイブズ」の設立(1970年)、設立後援者のジェローム・ヒル(映画作家で富豪)や、ヒルの遠縁でもあるピーター・ビアード(写真家)、ポップアートの立役者アンディー・ウォーホルといった人々との映画の共作など、多岐にわたります。

今回上映する映画「歩みつつ垣間見た美しい時の数々 As I Was Moving Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty」は、前記の映画のほか数多のメカス作品の膨大なフィルムを編集して2000年に制作されました。
メカスは、その解説として『ジョナス・メカス──ノート、対話、映画』(せりか書房)の中でこう言っています。
「わたしには人生がどこから始まり、どこで終わるのか、いろいろ考えてみたけれど、どうしてもわからない。(中略)今回たくさんのフィルムをまとめる段になって、まず考えたのは、年代順に並べることだった。でも、それはすぐに諦めて(中略)無秩序のままにしておいた。(中略)ほんとうの人生、ほんとうの人間というものが理解できないのと同じこと。今でも理解できないし、理解したいとも思わない……」。

そうしてできた映画「歩みつつ垣間見た美しい時の数々」の中で、メカスは訛りのある英語でゆっくり、時に早口に、ある時は朗々と、またある時は聞き取れないほど小声でその思いを語ります。
日本語字幕はありませんが、その声音が観る人を詩の世界へ誘います。メカスの人生への温かいまなざし、不屈の精神、美に対する澄んだ感覚を十分に味わえる作品です。
より理解を深めたい方は、ぜひ『ジョナス・メカス──ノート、対話、映画』に収録された同作品のコメンタリーをご一読の上、幸福感に溢れた288分を詩人と共有してください。(W.H.)

(※)フルクサス Fluxus:1960年代にリトアニア系アメリカ人の建築家、美術家のジョージ・マチューナスが主導した芸術運動。アーティストのスタジオやギャラリーが立ち並ぶ街区ソーホーはこの運動によって誕生した。

【特集関連書籍・Web Shop
■映画「歩みつつ垣間見た美しい時の数々」コメンタリー収録『ジョナス・メカス ノート、対話、映画』(2012年 せりか書房 税別4,700円)
■『フローズン・フィルム・フレームズ 静止した映画』(1997年 河出書房新社 税別2,000円)
■『ジョナス・メカス詩集』(2019年 書肆山田 税別3,300円)
■『どこにもないところからの手紙』(2005年 書肆山田 税別2,500円)
■『メカスの難民日記』(2011年 みすず書房 税別4,800円)

TOPへ

関連記事

スクリーンショット 2020-09-16 18.20.23

【Living on Reading 読み暮らす人のための本の話】
ホッパー絵画付き短編集と、油彩画集など

こ、これは……! 未知の作家と出会う喜び

「文学の評価はその国の経済力によるところが大きい。20世紀の米文学がいい例だ。経済抜きで評価するなら、米文学なんぞラテン文学の足下にも及ばない」──こ

read more >>

IMG_7257

Where is the Nowhere ---Reading the poetry, diary and movie
ジョナス・メカス特集 故郷はどこに──詩、日記、映画を読む

2020年6月2日(火)再開 - 最終日13日(土)

☁6月2日(火)より営業を再開致します。 ☁入店の際はマスク着用と、入り口に用意してありますアルコールでの手指の消毒をお願い致します。 ☁映画鑑賞の際

read more >>

ギンタラス・カロサス

アーティスト
ギンタラス・カロサス

リトアニア初の野外現代美術館
「ユーロ・パーク」創設者

  1980年代後半のリトアニア、と言うとどんなイメージを抱くだろう? まだベルリンの壁はあり、バルト三国はソ連邦に組み込まれていた時代、鉄

read more >>