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いそがない京都──
二条城を臨む16室のコンテンポラリースタイルホテル
HOTEL CANATA KYOTO ラウンジ ブックキュレーション
Wednesday 17, July, 2019
curation news
今春、京都、二条城正門真向かいに誕生したHOTEL CANATA KYOTO。
建築、インテリア、設備、演出のすべてに「いそがない京都」というテーマが息づく、上質を知る人のためのコンテンポラリースタイルホテルです。
ゆったりした1階ラウンジは、本と音楽とボタニカルブランデー(mitosaya)でくつろぐ空間。その本棚のブックキュレーションをBooks and Modernが担当しました。
「現代の美意識で日本を楽しむ」300冊
ブックキュレーションにあたって、ホテルのディレクター 川渕恵理子さんから出されたテーマは「現代の美意識で日本を楽しむ」。
現代的なセンスと美意識を持つ旅慣れた国内外のお客さまの知的な好奇心や、リラクゼーションを求める気持ちに応える本を300冊(和書200冊、洋書100冊)──ということで、アートやデザインなどのビジュアル本、小説や随筆などの文芸、遊び心のある趣味の本、ラウンジのバーを特徴づけているブランデーなどのお酒も含めた食文化や自然……、置きたいタイトルが次々と浮かんできます。
テーマは「日本を楽しむ」と限定的でも、「現代の美意識」となるとテイストは甘辛、軟鋼さまざま。
建築であれば「桂離宮」、絵画であれば「狩野派」や「琳派」といった王道にとどまらず、モダンデザインや時代を映したコンテンポラリーな感性、やひらめきのある作品集、読み物などを、手に取る方を思い浮かべながら、和洋取り混ぜてバラエティー豊富に揃えました。
物語の世界から、アート→建築→庭→植物→料理→旅……
天井まである大きな書棚には、文学から絵本まで13の分野を想定しました。
構成は、やはり本屋のセレクション、「読み浸っていただきたい!」という思い入れたっぷりの「文学 Literature」に始まり、「随筆・評論 Essay and Criticism」、見て楽しい、吸い込まれるような「芸術 Art」「写真 Photography」、そして「建築 Architecture」、「デザイン Design」、「工芸 Art Craft 」と続きます。
建築とも関わりの深い「庭・植物 Garden and Plant」のそばには、植物とつながりのある「料理 Cooking」。さらに世界の味を追いかけて「旅行 Travel」、ロードムービーと一緒に、「映画・音楽 Cinema and Music 」、「ファッションClothing and Fashion」へ……。
最後は、大人も子どもも楽しめる「絵本 Picture book」でお家に帰ってくるような道のりです。
音楽とソファ、書棚を巡るコンテクスト
13それぞれの分野は独立しているようで、実はつながっています。「文学」と「随筆・評論」は関連性が高く、また、「芸術」と「写真」、そして「建築」もコンテクスト(文脈)がとても親密。“ロード・ムービー”という映画のジャンルがあるとおり、「旅行」と「映画・音楽」の相性も抜群です。
そして、各分野を横断するジャンルとてして「歴史 History」についても数冊選書。それぞれが「文学」や「アート」、「旅行」の中に仲間を見つけて、そっと収まっています。
心地よい音楽、現代的な洗練と和のテイストが調和したデザインのバーに、プライベートなリビングを思わせるソファのスペース……。知的で遊び心ある空間のテイストをより印象づけるライブラリーの300冊は「現代の美意識で日本を楽しむ」というひとつの物語を描いて、静かにくつろぎの時間の質を高めています。(W.H.)
【ホテル概要】
名称:HOTEL CANATA KYOTO
所在地:〒604−0055 京都府京都市中京区堀川通二条下ル土橋町14−1
電話:075−256−1181
施設案内:
2−4階 客室 16室(スイートルーム2室 72−73㎡ その他23−42㎡ テラス含む)
1階 フロント、ラウンジバー
開業日:2019年4月25日
■クリエイティブチームメンバー
プロジェクトマネジメント:安田季雄(Hideo Yasuda)株式会社TRIAD
ホテルマネジメント:大橋優之伴(Masanosuke Ohashi) 株式会社CANATA
トータルディレクション:川渕恵理子(Eriko Kawabuchi)文化星人
建築設計/客室インテリアデザイン:
入江茂樹(Shigeki Irie) 光井純&アソシエーツ建築設計事務所
ロビー・ラウンジバー インテリアデザイン:
高橋紀人(Norito Takahashi)Jamo associates
アートワーク:吉田真一郎(Shinichiro Yoshida)近世麻布研究所
ブックディレクション:若井浩子(Hiroko Wakai)Books and Modern
朝食・フードメニュー監修:五十嵐 大(Dai Igarashi)日本料理 僖成
バーメニュー監修:松沢健(Takeshi Matsuzawa)
コンセプトワーク:渡辺潤平(Junpei Watanabe) 渡辺潤平社
ロゴ・グラフィックデザイン:重実生哉(Ikuya Shigezane)
ウェブサイト制作・運用/音楽監修:入江拓也 SETENV
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